「好きだから、選ぶ。」と言われるランドリーへ 〜肌を想うコインランドリーのプレファレンス戦略〜

コインランドリーが地域にいくつも存在する時代。価格や立地、設備が似通っている中で、「どのランドリーに行くか」は、いよいよ“感情”によって選ばれるようになってきました。

「なんとなく近いから」「いつも使ってるから」――こうした選ばれ方から一歩進んで、「ここがいいから」「ここじゃないと」と感じてもらえるランドリーこそ、これからの時代に生き残る店舗です。

その鍵となるのが、「相対的好意度(プレファレンス)」です。
これは、“比較されたときに、どれだけ好かれているか”という指標。つまり、「他のランドリーよりも、私はこのランドリーが好き」と思ってもらえる状態のことです。

本コラムでは、「肌を想うランドリー」として誕生した『お肌ランドリー』の事例を交えながら、コインランドリーのプレファレンスを高めるために必要な考え方と実践方法をお伝えします。


■ プレファレンスは“想い”から生まれる

お肌ランドリーは、他のコインランドリーと何が違うのか。それは、開発の原点に“肌への悩み”という、切実で深い想いがあることです。

幼いころからアトピー性皮膚炎に悩まされてきた開発スタッフは、夜中にかゆみで目が覚め、眠れない日を何度も経験しました。肌を隠すために長袖を着ていた夏の日。洗濯や柔軟剤にも気を遣い続ける日常。洗濯という行為そのものが、どこか苦しく、慎重を要するものでした。

そんな経験から、「肌の弱い人でも、安心して洗濯ができる場所をつくりたい」という想いが芽生え、やがて『お肌ランドリー』というコンセプトが誕生します。

皮膚科医監修の無添加洗剤を使用し、肌に刺激を与える成分を一切含まないこと。洗濯機の洗浄管理を徹底し、香料や残留成分にまで配慮すること。

こうした取り組みはすべて、「あのころの自分が欲しかった場所」をかたちにしたものです。


■ プレファレンスを高める4つの戦略視点

お肌ランドリーのように、選ばれる理由を“人の想い”に根ざしたものにするためには、戦略的に取り組むべきポイントがあります。

① 明確なコンセプトと「誰のための店か」を決める

まず重要なのは、「誰のために、何を提供するランドリーなのか」を明確にすることです。

お肌ランドリーは、「肌の弱い方や赤ちゃんを持つご家庭のためのランドリー」として存在しています。それによって、提供すべき洗剤、衛生管理、空間設計、すべての基準が定まりました。

逆に、「誰でもウェルカム」のようなコンセプトは、一見広く顧客を受け入れるようでいて、結果的に“記憶に残らない店”になります。

現代の市場では、「誰の、どんな悩みを、どう解決するか」をはっきりさせた店舗のほうが、選ばれます。

② 理性ではなく“共感”でつながる

無添加洗剤を使っている、皮膚科医が監修している――こうした事実だけでは、まだ「好き」の感情には届きません。

なぜなら、消費者は情報ではなく、“共感”によって行動を起こすからです。

お肌ランドリーでは、開発ストーリーや「肌に悩みがあっても、安心して洗濯ができる場所を届けたい」というメッセージを伝えることで、「私もそうだった」「この人の気持ち、わかる」と感じてもらうことができています。

この「感情の共鳴」が起きたとき、人は価格や距離の不利を超えてでも、あなたの店を選びに来てくれるようになります。

③ 小さな“気遣い”で大きな“好意”を生む

プレファレンスは、きらびやかな広告や最新の設備だけで生まれるものではありません。むしろ、日常のなかの小さな“気遣い”こそが、好意を生みます。

お肌ランドリーでは、以下のような取り組みを行っています。

  • 店内に「エビデンス一覧」を掲示し、透明性を確保しています。
  • 店内は、オゾン発生装置を設置し常にクリーンな空間にしています。
  • 軟水装置とウルトラファインバブルで肌にやさしい水を使用しています。
  • 毎日の清掃だけでなく定期的にプロによるメンテナンスも実施しています。

これらは、肌に悩みを抱える方の「ちょっとした不安」を取り除き、「ここなら大丈夫」という信頼へとつながっています。

④ “広く浅く”ではなく“深く狭く”伝える

広告戦略においても、プレファレンスを高めるには「深さ」が重要です。

お肌ランドリーでは、地域内での認知率がある程度高まったエリアに対して、繰り返し情報を届ける戦略をとっています。チラシ、SNS、Googleビジネスプロフィール、口コミの促進、店内グラフィックなど、あらゆる媒体で一貫して「肌を想うランドリー」というメッセージを発信。

このように「同じメッセージを、同じ人に、何度も伝える」ことで、“好き”という感情がじわじわと育っていきます。


■ 好かれるランドリーが、選ばれるランドリーになる

洗濯という日常行為のなかに、少しでも安心を持ち込みたい。そんな想いから生まれた『お肌ランドリー』は、肌へのやさしさだけでなく、「人へのやさしさ」を提供しているとも言えるでしょう。

プレファレンスを高めるとは、設備を豪華にしたり、価格を下げたりすることではありません。「このお店は、自分のことをちゃんと考えてくれている」と感じてもらうこと。それが最大の差別化であり、信頼の土台です。

好かれる理由があるランドリーは、強いです。価格ではなく、立地でもなく、「気に入っているから、ここに来る」というお客様が、必ず店舗を支えてくれます。

あなたのランドリーには、“好きになってもらえる理由”があるでしょうか?
それが明確になったとき、あなたの店は“なんとなく”ではなく、“ここがいい”と選ばれる存在になっていくでしょう。

 

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